株式会社 GSユアサ環境科学研究所

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労働安全衛生法施行令(石綿則等)

 

労働安全衛生法施行令(石綿障害予防規則等)について

 

 

石綿対策の強化について

 

建築物・工作物・船舶の解体工事、リフォーム・修繕などの改修工事に対する石綿対策の規制が強化されます

 

石綿は平成18(2006)9月から輸入、製造、使用などが禁止(罰則あり)されていますが、それより以前に着工した建築物·工作物·船舶は石綿が使用されている可能性が高く、解体工事·改修工事で飛散した石綿の粉じんを吸い込むと、肺がんや中皮腫を発症するおそれがあります。適切な対策の実施が必要です。

 

1.工事開始前の石綿調査の有無の調査

1-1 工事対象となる全ての部材について、石綿が含まれているかを事前に設計図書などの文書目視調査し(事前調査)、調査結果の記録を3年間保存することが義務になります(令和34)

1-2 建築物の事前調査は、厚生労働大臣が定める講習を修了した者等に行わせることが義務になります(令和510月~)

 

2.工事開始前の労働基準局監督署への届出

2-1 石綿が含まれている保温材等の除去等工事の計画は14日前までに労働基準監督署に届け出ることが義務になります(令和34月~)

2-2 一定規模以上の建築物や特定の工作物の解体·改修工事は、事前調査の結果等を電子システム(スマホも可)で届け出ることが義務になります(令和44月~)

 

3.吹付石綿・石綿含有保温材等の除去工事に対する規則

3-1 除去工事が終わって作業場の隔離を解く前に、資格者による石綿等の取り残しがないことの確認が義務になります(令和34月~)

 

4.石綿含有仕上塗材・成形板等の除去工事に対する規制

 4-1 石綿が含まれている仕上塗材をディスクグラインダー等を用いて除去する工事は、作業場の隔離が義務になります(令和34月~)

4-2 石綿が含まれているけい酸カルシウム板第1種を切断、破砕等する工事は、作業場の隔離が義務になります(令和210月~)

石綿が含まれている成形板等の除去工事は、切断、破砕等によらない方法で行うことが原則義務になります(令和210月~)

4-3 建材を湿潤な状態にすることが困難な場合の措置。石綿含有建材の除去等作業時に、湿潤な状態にすることが著しく困難なときは、除じん性能付き電動工具の使用など、石綿粉じんの発散防止措置に努める必要(令和34月~)

 

5.写真などによる作業の実施状況の記録

5-1 石綿が含まれている建築物、工作物又は船舶の解体·改修工事は、作業の実施状況を写真等で記録し、3年間保存することが義務になります(令和34月~)

 

6.労働者ごとの作業の記録項目の追加 令和3年4月1日施行

6-1 40年の保存義務がある労働者ごとの作業の記録に追加が必要な項目

 

 

上記1-6の詳細について

 

1-1 工事開始前の石綿の有無の調査(方法の明確化) 令和3年4月1日施行

   工事対象となる全ての部材について事前調査が必要

   事前調査は、設計図書などの文書および目視による必要

   事前調査で石綿の使用の有無が明らかにならなかった場合には、分析による調査の実施が義務

※石綿が使用されているものとみなして、ばく露防止措置を講ずれば、分析は不要

「目視」とは、単に目で見て判断することではなく、現地で部材の製品情報などを確認することをいう

目視ができない部分は、目視が可能となった時点で調査

石綿が使用されていないと判断するためには、製品を特定した上で、以下のいずれかの方法によらなければならない

·その製品のメーカーによる証明や成分情報などと照合する方法

·その製造年月日が平成1891日以降であることを確認する方法

以下の確認ができる場合は、目視等によらなくてもよい

·過去に行われた事前調査に相当する調査の結果の確認

·インベントリ確認証書が交付されている船舶のインベントリの確認

·着工日が平成1891日以降であることの確認

以下に該当する場合は、石綿の飛散リスクはないと判断できるので調査不要

·木材、金属、石、ガラス、畳、電球などの石綿が含まれていないことが明らかなものの工事で、切断等、除去または取り外し時に周囲の材料を損傷させるおそれのない作業

·工事対象に極めて軽微な損傷しか及ぼさない作業

·現存する材料等の除去は行わず、新たな材料を追加するのみの作業

·石綿が使用されていないことが確認されている特定の工作物の解体·改修の作業

 

1-2 工事開始前の石綿の有無の調査 令和5年10月1日施行

■事前調査や分析調査は、要件を満たす者が実施する必要

事前調査を実施することができる者

·特定建築物石綿含有建材調査者

·一般建築物石綿含有建材調査者

·一戸建て等石綿含有建材調査者

※一戸建て住宅·共同住宅の住戸の内部に限定

·令和59月までに日本アスベスト調査診断協会に登録された者

分析調査を実施することができる者

·厚生労働大臣が定める分析調査者講習を受講し、修了考査に合格した者

·公益社団法人日本作業環境測定協会が実施する「石綿分析技術の評価事業」により認定されるAランクまたはBランクの認定分析技術者

·一般社団法人日本環境測定分析協会が実施する「アスベスト偏光顕微鏡実技研修(建材定性分析エキスパートコース)修了者」

·一般社団法人日本環境測定分析協会に登録されている「建材中のアスベスト定性分析技能試験(技術者対象)合格者」

·一般社団法人日本環境測定分析協会が実施する「アスベスト分析法委員会認定JEMCAインストラクター」

令和3年4月1日施行

調査結果の記録は、3年間保存する必要

調査結果の写しを工事現場に備え付け、概要を見やすい箇所に掲示することも義務

調査結果の記録項目

·事業者の名称·住所·電話番号、現場の住所、工事の名称·概要

·事前調査の終了年月日

·工事対象の建築物·工作物·船舶の着工日、構造

·事前調査の実施部分、調査方法、調査結果(石綿の使用の有無とその判断根拠)

 

2-1 工事開始前の労働基準監督署への報告(事前調査結果等) 令和4年4月1日施行

報告対象工事·報告内容

報告が必要な工事

解体部分の床面積が80m2 以上の建築物の解体工事

※建築物の解体工事とは、建築物の壁、柱および床を同時に撤去する工事をいう

請負金額が100万円以上の建築物の改修工事

※建築物の改修工事とは、建築物に現存する材料に何らかの変更を加える工事であって、建築物の解体工事以外のものをいう

※請負金額は、材料費も含めた工事全体の請負金額をいう

請負金額が100万円以上の以下の工作物の解体工事·改修工事

·反応槽、加熱炉、ボイラー、圧力容器

·配管設備(建築物に設ける給水·排水·換気·暖房·冷房·排煙設備等を除く)

·焼却設備

·煙突(建築物に設ける排煙設備等を除く)

·貯蔵設備(穀物を貯蔵するための設備を除く)

·発電設備(太陽光発電設備·風力発電設備を除く)

·変電設備、配電設備、送電設備(ケーブルを含む)

·トンネルの天井板

·プラットホームの上家、鉄道の駅の地下式構造部分の壁·天井板

·遮音壁、軽量盛土保護パネル

電子システムで報告が必要な内容

·事業者の名称·住所·電話番号·労働保険番号、現場の住所、工事の名称·概要·工事期間

·事前調査の終了年月日、事前調査を実施した者の氏名等

·工事対象の建築物·工作物の着工日、構造の概要

·床面積(建築物の解体工事)または請負金額(その他の工事)

·石綿作業主任者の氏名

·事前調査結果の概要(材料ごとの石綿使用の有無、判断根拠)

·作業の種類·切断等の作業の有無·作業時の措置

報告の方法

·複数の事業者が同一の工事を請け負っている場合は、元請事業者が請負事業者に関する内容も含めて報告する必要

·平成1891日以降に着工した工作物について、同一の部分を定期的に改修する場合は、一度報告を行えば、同一部分の改修工事については、その後の報告は不要

 

3-1 吹付石綿・石綿含有保温材等の除去工事に対する規制 令和3年4月1日施行

・隔離場所の集じん·排気装置に、設置場所など何らかの変更を加えたときにも、排気口からの石綿等の粉じんの漏洩の有無を点検する必要

・作業中断時にも隔離場所の前室が負圧に保たれているか点検する必要

・除去作業終了後に隔離を解く前に、資格者による取り残しがないことの目視による確認が必要

負圧の点検は、作業開始前に加えて、作業中断時に作業者が集中

して前室から退出するタイミングで実施する必要

※作業中断時とは、休憩等で作業を中断した時何日間か継続する作業において最終日以外の日の作業を終了した時をいう

取り残しがないことの確認ができる資格者

·除去作業の石綿作業主任者

·事前調査を実施する資格を有する者(建築物に限る)

取り残しがないことの確認は、分析等は不要

 

4-1 石綿含有仕上塗材・成形板等の除去工事に対する規制 令和3年4月1日施行

・石綿含有仕上塗材をディスクグラインダーまたはディスクサンダーで除去するときは、ビニルシートなどにより作業場所を隔離し、湿潤な状態に保ちながら作業をする必要

作業場所の隔離は、負圧に保つ必要はない

高圧水洗工法、超音波ケレン工法等は作業場所の隔離不要

 

4-2 成形板等の除去工事に対する規制 令和2年10月1日施行

・石綿含有成形品(スレート、ボード、タイル、シートなど)の除去は、切断·破砕等以外の方法による必要(技術上困難な場合を除く)

・けい酸カルシウム板第1種をやむを得ず切断·破砕等するときは、ビニルシートなどにより作業場所を隔離し、湿潤な状態に保ちながら作業をする必要

※作業場所の隔離は、負圧に保つ必要はない

技術上困難な場合とは:

材料が下地材などと接着材で固定されており、切断等を行わずに除去することが困難な場合や、材料が大きく切断等を行わずに手作業で取り外すことが困難な場合など

切断·破砕等以外の方法とは:

ボルトや釘等を撤去し、手作業で取り外すことなどをいう

 

4-3 建材を湿潤な状態にすることが困難な場合の措置 令和3年4月1日施行

·石綿含有建材の除去等作業時に、湿潤な状態にすることが著しく困難なときは、除じん性能付き電動工具の使用など、石綿粉じんの発散防止措置に努める必要

湿潤な状態にする方法には:

散水による方法、固化剤を吹き付ける方法のほか、剥離剤を使用する方法も含まれる

発散防止措置には:

除じん性能付き電動工具の使用以外に、作業場所を隔離することが含まれる

 

5.写真等による作業の実施状況の記録 令和3年4月1日施行

3年間保存すべき記録の内容·記録方法

以下の内容が確認できるよう写真等により記録し、3年間保存する必要(⑥は文書等による記録で可)

①事前調査結果等の掲示、立入禁止表示、喫煙·飲食禁止の掲示、石綿作業場である旨等の掲示状況

②隔離の状況、集じん·排気装置の設置状況、前室·洗身室·更衣室の設置状況

③集じん·排気装置からの石綿等の粉じんの漏洩点検結果、負圧の点検結果、隔離解除前の除去完了確認の状況

④作業計画に基づく作業の実施状況(湿潤化の状況、マスク等の使用状況も含む)

※同様の作業を行う場合も、作業を行う部屋や階が変わるごとに記録する必要

⑤除去した石綿の運搬または貯蔵を行う際の容器など、必要な事項の表示状況、保管の状況

⑥作業従事者および周辺作業従事者の氏名および作業従事期間

記録は、写真のほか、動画による記録も可能

撮影場所、撮影日時等が特定できるように記録する必要

 

6.労働者ごとの作業の記録項目の追加 令和3年4月1日施行

40年の保存義務がある労働者ごとの作業の記録に追加が必要な項目

事前調査結果の概要

6ページ目の「電子システムで報告が必要な内容」と同様

作業の実施状況の記録の概要

写真等をそのまま保存する必要はなく、保護具の使用状況も含めた措置の実施状況についての文章等による簡潔な記載による記録